SaaSのクレジット・ポイントと資金決済法:付与・有効期間・終了時の清算

月額料金に連動してクレジットを付与するSaaSや、自社ポイントで使用許諾料を受け取るSaaSでは、「無償特典」と名づけるだけでは足りません。付与の根拠、対価性、有効期間、終了時の清算を、一つの設計で決めます。

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有効期間を発行の日から6か月以内としていても、営業の現場で期限の延長や失効分の復活を行えば、その前提は崩れます。

このページの要点

  • 付与の条文には、時期・回数・条件と、購入条件が付与分に及ばないことを書く。
  • 「無償」でも、月額料金に連動しLPで対価として宣伝していれば、対価性を否定しきれない。全部終了時は日割返金での清算を検討する。
  • 資金決済法の適用除外(4条2号、施行令4条2項の6か月)を使うなら、期限の延長と失効分の復活を運用でも禁止する。
  • 決済の取消し時は、付与分の取消しと消費済み分の精算の手順を決め、LPの表示と規約を一つずつ照合する。

結論:クレジットは「無償特典」と名づけるだけでは足りない。付与の根拠、対価性、有効期間、終了時の清算を一つの設計で決める

SaaSで、月額料金を払うと毎月一定数のクレジットが付与され、機能の利用や成果物の作成の依頼でクレジットを消費する、という料金の仕組みが増えています。自社のポイントを金銭で購入してもらい、ソフトウェアの使用許諾料やコンサルティングの対価にあてる方式もあります。どちらも、規約の条文を書く前に確認すべき点が重なります。

  • 付与の根拠条文は、付与の時期、付与の回数、購入条件が付与分に及ばないことを書いておく。
  • 「無償」と書いても、月額料金に連動し、LPで対価として宣伝していれば、対価性を否定しきれない場面がある。サービスの全部が終わるときは、クレジットの払戻しではなく、月額料金の日割返金で清算する設計がある。
  • 前払式支払手段にあたるかは、資金決済法3条1項で判断する。発行の日から6か月内に限り使用できるものは適用除外(同法4条2号、同法施行令4条2項)。期限の延長や失効分の復活を運用で行うと、この前提が崩れる。
  • 解約時の未使用分の失効、譲渡の禁止は、定型約款のみなし不合意(民法548条の2第2項)や消費者契約法の審査を受ける。
  • 決済が取り消されたときは、付与分の取消しと、消費済み分の精算の手順を、あらかじめ決めておく。
  • LPの「月額○円で○件まで」といった表示は、規約と整合させ、打消し表示は近くに置く。

このページは、事業者向けのSaaSの月額特典やポイント制を中心に説明します。料金の「何を数えるか」の設計は料金設計のページ、障害時のクレジットによる清算はSLAのページで扱っており、ここでは資金決済法と終了時の清算に絞ります。税込か税別かの表示は、料金表に必ず明記します。

月額料金の決済ごとに付与するクレジット:条文の置き方

月額料金の決済のたびに自動で付与されるクレジットは、通常の料金の一部として説明されることもあれば、特典として説明されることもあります。どちらの説明でも、規約には、付与の仕組みを具体的に書きます。付与の根拠が曖昧だと、付与されなかった、二重に付与された、解約した月の付与はどうなるのか、といった争いになります。

付与の条文で決める項目

項目決めること書き方の例
付与の時期決済の確認がとれた時か、決済の日か、利用期間の開始日か月額料金の決済が確認された時に付与する
付与の回数決済の1回につき1回か、利用月に付き1回か各利用期間の月額料金の決済につき、所定の数を1回付与する
付与の条件決済の成立が条件か、継続利用が条件か決済が取り消されたときは、付与しない。付与済みのときは取り消す
購入条件の不適用別にクレジットを購入できる場合の購入条件が、付与分に及ぶか付与分は購入条件(購入単位、有効期間、払戻し)の対象としない旨を明記する
消費の順序付与分と購入分、期限の近い分と遠い分のどちらから使うか期限の近い分から消費する
繰越し未使用分を翌期間へ繰り越すか所定の期間内に限り使用でき、期間の経過で失効する

条文例クレジットの月次付与(書き方の例)

  1. 当社は、契約者が月額料金を支払ったとき(当社が決済を確認した時点とします)は、当該利用期間につき、所定の数のクレジットを契約者に付与します。
  2. 付与は、各利用期間につき1回とします。プランの変更、日割計算、解約があった月の付与の数は、当社が別に定める方法によります。
  3. 本条により付与されたクレジットは、購入によって取得したクレジットに適用される購入の条件(購入の単位、有効期間、払戻し)の対象とはせず、本条および第○条(有効期間)の定めによります。
  4. 決済が取り消され、または支払が行われなかったときは、当社は、付与したクレジットを取り消すことができます。

「所定の」「別に定める」の内容を、料金表や案内ページに置くときは、規約の改定手続とは別の変更手続になる点に注意します(料金改定のページ)。

購入条件の不適用を書いておく理由は、付与分と購入分が同じ「クレジット」という名前で呼ばれるためです。購入したクレジットには払戻しや有効期間の定めが及ぶのに、付与分にも及ぶのかが書かれていないと、付与分を後から購入分と同じに扱うべきだ、いや別だ、という争いが起きます。付与分と購入分を別の名前で区別するか、区別する条項を置きます。

「無償特典」と書いても、対価性を否定しきれない場面

前払式支払手段にあたるかどうかの判断の出発点は、資金決済法3条1項です。証票や電子的な記録で金額や数量が表され、その金額や数量に応ずる「対価を得て発行」され、発行者などから物品や役務の提供を受けるときの代価の弁済に使えるもの(1号)、または物品や役務の給付を請求できるもの(2号)が、前払式支払手段です。「対価を得て発行される」ことが要件なので、条文の上では、無償で付与されたものは、この要件を欠くことになります。

ただし、無償かどうかは、名前で決まりません。月額料金を払った人にだけ、毎月、決まった数が付与される場合、付与は月額料金の対価の一部と読まれ得ます。LPで「月額○円で、制作○件まで」と宣伝していれば、クレジットは月額料金で買う権利として表示されていることになります。規約で「無償の特典であり、いかなる場合も払戻しをしない」と書いても、LPや申込画面の説明と食い違えば、規約の側が不利に評価されます。対価性を否定しきれるかは、月額料金との結び付きの強さ、宣伝の仕方、付与の条件を総合して見ることになり、所管官庁の資料で確認が必要です。

この問題が目に見えて現れるのは、サービスの全部が終了するときです。月額料金を払って毎月クレジットを付与されていた契約者が、未使用のクレジットを持ったまま、サービスが終わる場面を考えます。「無償特典なので、払戻しはしない」と書いてあっても、納得は得られません。また、前払式支払手段に当たる場合の払戻しは、法律に基づく手続(20条)で行うものであり、任意の返金とは区別されます。

サービス全部終了時の清算の四つの設計

クレジットを現金で払い戻す

クレジットの金額を返す

  • 未使用のクレジットの価値をどう金額に換算するか(付与分は0円か)が問題になる
  • 購入分と付与分で換算が違う
  • 前払式支払手段にあたる場合は、法の手続に従う

無償特典として払い戻さない

規約に明記して返さない

  • LPや申込画面の説明と食い違うと、規約が不利に評価される
  • サービスの全部終了時に、納得を得にくい
  • 全部終了を前提とした書き方の確認が必要

月額料金の日割で清算する

クレジットでなく、料金の未経過分を返す

  • 終了日以後の期間に対応する月額料金を日割で返還する
  • クレジットの換算が不要になる
  • 提供者の都合による終了では、返還が明確

期間を設けて消化させる

終了まで一定の猶予を置く

  • 予告から終了までの間にクレジットを使い切れるようにする
  • 成果物の納品に時間がかかるときは、依頼の締切を設ける
  • 猶予後の未使用分は、日割清算と併用する

クレジットそのものの清算より、月額料金の日割返金で清算する設計の方が、換算の争いが少なくなります(提供者の都合で終わるときの前払金の扱い一般は期間・中途解約のページで扱っています)。

条文例サービス全部終了時の清算(書き方の例)

  1. 当社が本サービスの全部の提供を終了するときは、終了日の相当期間前までに、契約者に通知します。
  2. 前項の場合、当社は、終了日の属する利用期間の月額料金のうち、終了日の翌日以後の期間に対応する部分を、日割で契約者に返還します。
  3. 付与されたクレジットで、終了日までに使用されなかったものは、終了日に失効します。当社は、これについて別に金銭を返還する義務を負いません。
  4. 前項の定めにかかわらず、契約者の申出により、終了日までに依頼が可能なクレジットは、当社が定める締切日まで使用できます。

付与分のクレジットを払い戻さない旨を書くなら、申込み画面や案内ページでも、同じ説明を近くに表示します。

前払式支払手段の該当性と適用除外:発行の日から6か月内

前払式支払手段に当たると、発行者には、基準日(毎年3月31日と9月30日。資金決済法3条2項)ごとの未使用残高に応じた規制が及びます。自家型前払式支払手段(発行者などから購入する場合に限り使えるもの。同条4項)のみを発行する者は、基準日未使用残高が、発行を開始してから最初に基準額を超えたときに、内閣総理大臣に届出書を出します(同法5条1項)。基準日未使用残高が基準額を超えると、その2分の1以上の額の発行保証金を供託する義務が生じます(同法14条1項)。基準額は、政令で1,000万円とされています(同法施行令6条)。利用者への情報提供の義務もあります(同法13条1項)。

前払式支払手段の規制が及ぶか、整理する観点

観点条文確認すること
前払式支払手段にあたるか資金決済法3条1項対価を得て発行されるか。金額や数量が記録されているか。発行者などから物品や役務を受けるときに使えるか
発行の日から一定期間内に限り使えるか同法4条2号、施行令4条2項発行の日から6か月内に限り使用できるものは、この章の規定が適用されない
商行為となる取引だけで使うか同法4条7号利用者のために商行為となる取引においてのみ使用するものは適用除外。利用者が事業者に限られるか
自家型か第三者型か同法3条4項・5項自社のサービスの代価にだけ使えるなら自家型。他社のサービスにも使えるなら第三者型(登録が必要)
基準日未使用残高同法3条2項、5条1項、14条1項、施行令6条3月31日と9月30日の未使用残高。基準額を超えたときの届出と供託

適用除外のうち、SaaSのクレジットやポイントで検討されやすいのは、発行の日から6か月内に限り使用できるもの(法4条2号、施行令4条2項)です。クレジットやポイントの有効期間を発行の日から6か月以内にそろえておけば、この章の規定が適用されないという整理です。これは、有効期間の設計が規制の入口を左右する、ということでもあります。

この整理を維持するうえで禁止しておくべきなのが、有効期間の延長と、失効したクレジットの復活です。営業の場面で、期限が切れた顧客に「特別に延ばします」「失効分を戻します」と対応すると、実際には発行の日から6か月を超えて使えるクレジットを発行していることになり得ます。規約に「当社が別に認めた場合を除く」といった例外を書くと、その例外が運用の根拠になります。有効期間を延ばさない、失効分を戻さない、延長が必要な場合は新しく発行する(付与の日から改めて6か月とする)、と社内の運用手順にも落とし込んでおきます。なお、適用除外に当たるかは、所管官庁の資料で、最終的に確認が必要です。

書き方の例(一般的な例) 有効期間の書き方

期限の延長・復活

よくある書き方有効期間を経過したクレジットは失効します。ただし、当社が認めた場合は、有効期間を延長し、または失効したクレジットを復活させることができます。
整えた書き方有効期間を経過したクレジットは、理由のいかんを問わず失効し、復活させません。有効期間は、延長しません。

理由延長と復活の余地を規約に残すと、発行の日から6か月内という前提が崩れます。例外が必要な運用なら、規約より先に、規制への当てはめを確認します。

自社のポイントを金銭で購入してもらい、サービスの対価として使えるようにする方式は、金額に応ずる対価を得て発行する自家型前払式支払手段になり得ます(法3条1項1号・4項)。ポイントの購入規約と、ポイントを使う各サービスの契約が組みになる場合は、書類の間の参照関係を点検します。一方の契約が「有効期限はポイントの規約による」としているのに、参照先に有効期限の定めがない、規約の改定の予告の日数と、改定の効力が生じる時点の定めが食い違う、といった不整合があると、有効期間の設計が読み取れなくなります。

また、前払式支払手段に当たる場合は、払戻しにも制約があります。発行者は、発行の業務の全部または一部を廃止した場合などを除き、保有者に払戻しをしてはなりません(法20条5項)。購入した分を「返金しません」と書くことには、この規定に沿った面があります。逆に、払戻金額が少額である場合などとして内閣府令で定める場合を除き、任意に返金することも制約を受けるため、返金の運用を決める前に、条文と所管官庁の資料で確認が必要です。廃止の場合の払戻しは、公告や債権の申出の期間を設けた手続で行います(同条1項・2項)。

解約時の未使用分の失効と、譲渡の禁止は、有効か

クレジットやポイントの規約には、解約したときに未使用分が失効する、第三者に譲渡できない、換金できない、といった条項が置かれます。契約者が事業者でも、不特定多数に同一の条件で提供する規約は、定型約款にあたり得ます。定型約款の条項のうち、相手方の権利を制限し、義務を加重するもので、取引の態様や社会通念に照らして信義則に反して相手方の利益を一方的に害するものは、合意をしなかったものとみなされます(民法548条の2第2項)。契約者が個人であれば、消費者契約法10条も働きます。

未使用分の失効条項を見るときの観点

観点見ること
失効の理由契約者の都合の解約か、提供者の都合の終了か。提供者の都合なら、失効させない、または清算する
予告と猶予解約の申出から失効までの間に、使い切れる機会があるか
支払との関係購入や月額料金で対価を払ったクレジットか、付与分か。対価を払った分を失効させる場合の理由
表示失効することが、申込み前の画面で、金額やクレジット数の近くに示されているか
例外提供者の債務不履行、サービスの不具合で使えなかった分はどう扱うか

契約者の都合による解約で、付与された分が失効する条項は、通常の範囲と見られやすい書き方です。他方で、提供者の都合によるサービスの終了、提供者の債務不履行による解除で、未使用のクレジットを失効させる条項は、一方的に不利益と評価される余地が大きくなります。失効の条項は、契約者の都合による解約と、提供者の都合による終了を分けて書きます。

譲渡の禁止は、実務上、転売や名義貸し、不正な取得を防ぐ理由があります。クレジットを譲渡できない、換金できない旨は、ほかの契約者に使われることを防ぐ観点から説明できます。これに反する行為があったときに、クレジットの無効化や利用停止ができる旨も、禁止事項と合わせて置きます。無効化が、正当な利用者に及ばないよう、不正の疑いの調査と通知の手順を決めておきます。

書き方の例(一般的な例) 解約時の失効の書き方

解約とクレジットの失効

よくある書き方契約が終了したときは、未使用のクレジットは、理由のいかんを問わず、直ちに失効します。
整えた書き方契約者の都合による解約では、解約の効力が生じた日に、未使用のクレジットは失効します。当社の都合による終了、または当社の責めに帰すべき事由による解除では、前条(終了時の清算)の定めによります。

理由提供者の都合による終了で、一律に失効させる条項は、定型約款や消費者契約法の審査で不利になりやすくなります。場面を分ければ、失効の条項そのものは維持しやすくなります。

決済の取消し・チャージバックと、付与分の巻戻し

カード決済のSaaSでは、決済が失敗したり、後から取り消されたりします。月額料金の決済が取り消されたとき、すでに付与されたクレジットをどうするかは、付与の条文と同じくらい重要な条項です。付与済みのクレジットが残っていれば取り消せますが、消費された後であれば、取り消すものがありません。

決済の取消しの場面ごとの処理

場面クレジットの状態処理の例
付与の前に決済が失敗した未付与付与しない。再決済の期限を定め、期限の経過で契約を停止する
付与の後、未使用のまま決済が取り消された付与済み・未使用付与分を取り消す。取消しの日時と数を記録して通知する
付与の後、一部を使用してから決済が取り消された付与済み・一部使用未使用分は取り消す。使用済み分は、金銭で精算するか、次回以降の請求と相殺する
成果物の作成の依頼に使用済みで、納品も済んでいる全部使用使用済み分の対価は、金銭で請求する。納品物の利用の扱いも決める
二重付与・誤付与があった付与済み誤って付与した分を取り消す。使用済みなら、不当利得として返還を求める(民法703条)

使用済みのクレジットの精算は、金銭で請求するのか、次回以降の請求と相殺するのか、をあらかじめ決めておきます。契約者に対する提供者の債権と、契約者に対する返還の債務を相殺できる旨は、互いに同種の債務を負担し、双方が弁済期にある場合に認められるので(民法505条1項)、規約に書いておくと請求の手間が減ります。

条文例決済の取消し時の取扱い(書き方の例)

  1. 月額料金の決済が取り消され、または支払が行われなかったときは、当社は、当該決済に関して付与したクレジットのうち、未使用のものを取り消すことができます。
  2. 前項の場合に、すでに使用されたクレジットがあるときは、契約者は、当該使用分に相当する対価を、当社が別に定める方法により支払うものとします。当社は、契約者に対する債務と相殺することができます。
  3. 当社は、誤って付与したクレジットを、通知のうえ取り消すことができます。
  4. 当社は、第1項から第3項の取消しの記録(日時、数、理由)を保存し、契約者の求めに応じて開示します。

チャージバックは、カードの利用者が決済事業者に異議を述べ、売上が取り消される仕組みです。取消しが確定するまでに時間がかかるので、その間に付与分が消費され、制作物が納品されることがあります。確定を待たずに付与するか、確定後に付与するかは、リスクと使い勝手のバランスで決めます。付与の台帳を作り、付与・消費・取消しをすべて記録しておくと、精算の根拠になります。

LPの「月額○円で○件まで」という表示と、規約の整合

クレジットを消費して機能や成果物の作成を利用する料金は、LPや申込画面での表示が、規約と食い違いやすい領域です。景品表示法5条2号は、価格その他の取引条件について、実際のものよりも取引の相手方に著しく有利であると一般消費者に誤認される表示で、不当に顧客を誘引し、自主的かつ合理的な選択を阻害するおそれがあるものを禁じています。同条1号は、品質や内容について、実際のものよりも著しく優良であると示す表示を禁じています。

「月額○円で○件まで」という表示は、毎月の件数に上限があるのに上限がないように見える、解約すると未使用分が失効するのに繰り越せるように見える、という点が問題になり得ます。打消し表示(強調表示の例外や条件を示す表示)を置くときは、強調表示の近くに、読める大きさで置きます。LPの下の方や、別のページにあるだけでは足りないと評価される余地があります。事業者向けのSaaSであっても、個人事業主や開業前の個人が混じることがあり、消費者向けの表示規制や特定商取引法の通信販売の広告の規制(11条)が問題になる場面があります。

LPの表示と規約を照らし合わせる項目

表示すること規約との整合
月額料金と、税込か税別か料金表と同じ表示にする。税込か税別かを明記する
毎月のクレジットの付与数付与の条文と同じ数・同じ時期にする
1回の作成や機能の利用に必要なクレジット数消費の条文、または料金表と同じにする。変更の手続も示す
有効期間、繰越しの可否有効期間と失効の条文と同じにする。期限の延長はしない旨とも矛盾させない
解約時の未使用分の扱い失効することを、申込み前の画面で、クレジット数の近くに表示する
サービス終了時の清算日割返金などの方針を、規約と同じ内容で示す
追加のクレジットの購入条件購入分の有効期間と払戻しの条件を、付与分と区別して示す

LPを制作する担当者と、規約を整える担当者が別だと、LPの文言だけが先に変わり、規約が追いつかないことが起きます。LPの改定は、規約の付与・消費・失効・清算の条文と、一つずつ照らし合わせる手順を、社内の運用に入れておきます。

確かめる問いと理由設計の前に確かめる問い

  1. クレジットは、月額料金の決済に連動して付与しますか。LPでは、どう宣伝しますか。

    連動の程度と宣伝の仕方で、対価性の評価が変わります。「無償」と書く前に、LPの文言を確認します。

  2. 有効期間は、発行の日から6か月以内ですか。延長や復活の運用はありますか。

    6か月内に限り使えるという整理を維持するなら、延長と復活を運用でも禁止します。

  3. サービスの全部が終わるとき、未使用のクレジットはどう清算しますか。

    払戻しではなく、月額料金の日割返金で清算する設計も検討します。

  4. 決済が取り消されたとき、付与分と消費済み分はどう処理しますか。

    未使用分の取消しと、消費済み分の金銭精算または相殺を、条文と台帳で決めます。

  5. LPの表示と、規約の条文は、同じ数・同じ期間になっていますか。

    改定のたびに、付与・消費・失効・清算を一つずつ照合します。

問いの順は、決める順です。有効期間の設計が決まらないと、規制への当てはめも、終了時の清算も決まりません。

起きがちなこと:「無償特典」と書いたまま、運用だけが有償と同じになる

クレジットやポイントの規約で起きがちなのは、条文の書き方の誤りよりも、条文・LP・運用の三つがばらばらに動くことです。

起きがちなこと

  • クレジットを「無償特典」と書きながら、LPでは月額料金で買える権利のように宣伝している。
  • 有効期間を6か月以内としながら、営業の現場で「特別に延ばします」「失効分を戻します」と対応している。
  • 規約に「当社が別に認めた場合を除く」と書き、その例外が延長と復活の根拠になっている。
  • サービスの全部が終了するときに、未使用のクレジットを一律に失効させる条項しかなく、月額料金の日割返金の定めがない。
  • 一方の契約が「有効期限はポイントの規約による」としているのに、ポイントの規約に有効期限の定めがない。
  • 決済が取り消されたときの、付与分の取消しと消費済み分の精算の手順が決まっておらず、現場の判断になっている。
  • 付与分と購入分が同じ名前で、購入条件や払戻しの定めがどちらに及ぶか分からない。
  • 規約の改定の予告の日数と、改定の効力が生じる時点の定めが、書類の間で食い違っている。

規約を出す前の確認

  • 付与の時期・回数・条件・購入条件の不適用を、条文で書いたか。
  • 前払式支払手段にあたるかを、資金決済法3条1項で確認し、適用除外(4条2号・7号)を検討したか。
  • 有効期間を設計し、延長と復活の運用を禁止したか。
  • サービスの全部が終わるときの清算を、日割返金などで決めたか。
  • 解約時の失効を、契約者の都合による解約と、提供者の都合による終了に分けたか。
  • 決済の取消し時の、付与分の取消しと消費済み分の精算を決め、台帳を作ったか。
  • LPの表示と、規約の条文を、一つずつ照らし合わせたか。

よくあるご質問

毎月付与するクレジットを「無償」と書けば、資金決済法の問題はなくなりますか。

なくなるとは限りません。前払式支払手段は、金額や数量に応ずる「対価を得て発行」されることが要件です(資金決済法3条1項)。名前が無償でも、月額料金に連動して付与され、LPで対価として宣伝されていれば、対価性を否定しきれない場面があります。結び付きの強さと宣伝の仕方を総合して見ることになり、所管官庁の資料で確認が必要です。

発行の日から6か月内に限り使えるクレジットは、規制の対象外ですか。

発行の日から政令で定める一定の期間内に限り使用できる前払式支払手段には、この章の規定が適用されません(資金決済法4条2号)。その期間は6か月とされています(同法施行令4条2項)。ただし、期限を延ばしたり、失効分を復活させたりする運用があると、この前提が崩れるおそれがあります。適用の有無は、所管官庁の資料でも確認します。

サービスを終了するとき、未使用のクレジットは払い戻す必要がありますか。

前払式支払手段にあたるかどうかで法的な位置づけが変わります。あたる場合は、発行の業務を廃止するときの払戻しは法の手続に従います(資金決済法20条)。あたらない場合も、月額料金を払っている契約者には納得を得にくいので、クレジットの払戻しではなく、終了日以後の月額料金の日割返金で清算する設計があります。

解約したときに未使用のクレジットが失効する条項は有効ですか。

契約者の都合による解約での失効は、通常の範囲と見られやすい書き方です。ただし、不特定多数に同一の条件で提供する規約は定型約款にあたり得て、一方的に不利益な条項は合意をしなかったものとみなされます(民法548条の2第2項)。提供者の都合による終了や、提供者の責めによる解除でも一律に失効させる条項は、不利に評価されやすくなります。

決済が取り消されたとき、付与したクレジットはどうしますか。

未使用の分は取り消せますが、使用済みの分は取り消すものがありません。使用済み分の対価を金銭で請求するのか、次回以降の請求と相殺するのかを、規約に書いておきます(相殺は民法505条1項)。付与・消費・取消しを台帳に記録しておくと、精算の根拠になります。

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